interlude






「……そこまで、筆記用具を置いて
 後ろから答案用紙をまわしてください」

教師のその言葉と同時に教室に様々な音が生き返る。
安堵のため息を洩らす者がほとんどの中
「終わった……」と燃え尽きる者や意味不明な言葉を叫ぶ者
などこのテストの出来を嘆く(?)者もいる。


長かったテスト期間が終わりもうすぐ夏休みなので
すでにテンションがハイになっている者もいるのだろう。
そんな中、窓際の席で一人黙々と帰り支度をしている生徒が一人。
そこへ、赤い頭をした如何にも不良といった格好をしている男が近づいていく。

「おい、志貴」

呼ばれた少年は、ゆっくり振り返ると一言

「……なんだ、有彦か」
「なんだとはずいぶんひどいじゃないかこうやって
 行く当てがなく、一人寂しく帰ろうとしている
 少年を遊びに誘いにきてあげているって言うのに」

少年――志貴はどこか哀れみを含んだ目で赤頭――有彦を見ると 

「……ふっ」
「な、なぜそんな可哀そうなものを見るような目で俺を見る!」

有彦は向けられた視線の意味がわからず動揺し問いただす。

「ふん、それはな有彦」

志貴が神託を告げるのにも似た低い声で話しだす

「今日の俺はな……」
「お前は……?」
「家族と出かける! と言う重要任務があるのだよ」

大仰に言い放つ。

「……は? それだけか?」

どんなことがあるのかと身構えた有彦は、想像していたことより
遥かに下の―ある意味上―の内容に、ポカンという言葉がそのまま
当てはまりそうな表情をしてあきれる。

「そ、それだけだと!?」
「なにを言うかと思えば家族と出かけるだけかよ。はぁ」
「家族と出かけるだけだと? お前にはその重要性がわかるか
 いや、わかるまい。そう、義妹や叔母さんの買い物に叔父さん
 と付き合わされるための途方もない気力と体力の消耗。
          (中略)
 そして、その日の最後にやってくるそれまでの苦労が
 すべて吹き飛ぶようなご褒美! ああ、そのご褒美
 の前にはどんな苦難でも耐えられる」

有彦は、いきなり語り出した志貴を前に少々ひきながら
もここまで語ったからには聞いてほしいのだろうと考え

「それで、そのご褒美とやらはなんなんだ?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた」

(ったく、なにがよくぞ聞いてくれた、だ聞けっつー
 オーラを全身から出してるくせして)

「ん? 何か思ったか?」
「んにゃ」
「そうか、ならおしえてやろうそれはな」
「それは?」

先程のこともあり、あまり期待しないで聞いている有彦に
志貴はただ、傲慢に、明確に、絶対の優越をもって言い放つ










「大帝都で食い放題! だ]



一拍おいて

「なにー!? 大帝都で食い放題だと?」

有彦の叫びが響き、周りの視線が集まるが
二人はそんなことには気づかず続ける。

「その通りだ」
「貴様、中学生の身でそんなことが許されるとでも思っているのか!」
「言っただろう、買い物に付き合ったご褒美だと」

どことなくどころか、あからさまに優越を含んだ
視線をもって有彦を見やる。

「う」
「う?」
「裏切り者がぁー、おぼえてやがれーーー」

現実ではそうそう聞けない捨て台詞を叫びながら
有彦は走って教室を出て行った。

「ふっ、勝った」

言って見回すと教室にいる全員が自分―正確にはいままでのやり取り―
を見ていたことに気づくと「あはは」と苦笑いをし、急いで帰り支度を
済ませ帰路についた。




今日のこのあとの予定を思いながら歩いているといつもより早く家に
ついてしまった。しかし、早く帰ってきて不都合があるわけでもない
のでそのまま扉を開け家にはいった。

「ただいまー」

言いながら家に入り、靴を脱いで家にあがり部屋に向かおうとすると

「おかえりなさい」
「おっ、はやかったな」

啓子さんと文臣さんが居間でお茶をのみながら迎えてくれた。
(都古ちゃんは、まだ帰ってきてないのかな?)

「都古ちゃんはまだですか?」
「ん?」
「あら、都古ならもう……」

ドンッ

啓子さんが言い終らないうちに腰の辺りに後ろから無視できない
ほどの衝撃をかんじふりかえる。
(こ、この気配を感じさせずに突然襲ってくる衝撃は)

「や、やあ。都古ちゃん、もう帰ってきてたのか。」
「……おかえりなさい」
「うん、ただいま」

衝撃の正体は、もう完全に日常の一部となった義妹の都古ちゃんの
腰へのタックルで都古ちゃんは注意してないと聞き取れないほどの
音量で迎えの言葉を言ってくれた。

「志貴。あなたが帰ってきた出発する事になってたから、あなたが
着替え終わったらいきますから早く着替えてらっしゃい」
「はい。わかりました」

〜五分後〜


「啓子さん、準備できました」
「そう、じゃあ出かけましょうか。都古をよんできてくれるかしら」
「わかりました」

啓子さんに言われ、都古ちゃんをよびにいこうとするが
(あれ、そういえば都古ちゃんはどこにいったんだろう?)

「啓子さん」
「なに?」
「都古ちゃんはどこに?」
「あら、部屋じゃないの?」
「いえ、いませんでしたけど……」
「そうなの、どこいったのかしら?」

ふたりして思案していると

「おかあさんまだー?」

当の本人からやってきてくれました

「お、おにいちゃん」
「やあ、都古ちゃんちょうど都古ちゃんを探していたんだよ」
「そ、そうなんだ……」

都古ちゃんの言葉は、聞き取りにくかったけど
とりあえずみんなそろったしこれで出かけられるな。

「さあ、みんなそろったしでかけましょうか」

啓子さんの言葉をきいてみんなで外に動く
隣町とはいえ荷物があるので車で行くことになる
みんなが乗ると文臣さんの運転する車が動き出した。

〜移動中〜

〜買い物中〜

「さて、これ今日の買い物はおわりかな」
「ほ、本当ですか? 啓子さん」
「そうね、今日はもうほしいものはないわね。都古はなにかある?」
「ない」
「そう、じゃあご飯食べて帰りましょうか」

その言葉を聴いておれは心のそこから感動を覚えた。
やっと今日一日の苦労が報われる時が来たのだ。

「あの、啓子さんご飯はやっぱり……」
「そうね、志貴もがんばってくれたし言ってあった通り大帝都でいいらしら?」

啓子さんの確認の言葉に

「うん」
「ああ」
「おねがいします」

三人の返事が重なった、俺一人だけ真剣な声だったのには少しさびしさを感じてしまった。

「じゃあ、いきましょうか」

啓子さんのことばでみんな車に向かう
(今日は食えるだけ食ってやる)
一人だけ並々ならぬ決意をした志貴をのせ有間家の車は一路、大帝都をめざして走っていった。






















 あとがき
 すいませんでした。(土下座)
 なんだかんだいいながらこんなに
 時間がたってしまいました
 しかも題名変わってますし……
 次もがんばりますので
 どうか見捨てないでやってください。






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