〜ヨーロッパのある地方〜

























                                   


「ふぅ……」
 ある夜、月の光すら届かない闇のような森の中にため息がこぼれる。
「これで今回の仕事も終わりか?割と楽だったな」
 言うとその声の主は闇へと消えていった。


















「ふぁ……朝か」
 翌日泊まっていたホテルで目覚めた少年は手早く着替えチェックアウトをすませ外に出た。
「はー、仕事も昨日で終わったし今日には家にかえれるかな
 明日は都古のご機嫌をとらないとな」
(今回の仕事でそれなりの報酬があったし遊園地にでもいくか。たまにしか遊んでやれないなんて
 だめな兄貴だよなぁ)
 と、家にいる妹のような存在の少女が、毎回自分が断りもなく家をあけて帰るたびに
 みせる寂しさを隠した不機嫌な顔を思い出し顔に少々罪悪感をにじませた少年は考え込んでいると。





「志ーーー貴ぃーーーーくんっ」
「ぐはっっ」



 明るい声とともに常人には捕捉不能な速さのタックルをくらい5メートルくらいふっとばされた。
(誰だ?都古――がこんなところにいるはずがないし、それにこれほどの衝撃をだせるのは―)
 志貴と呼ばれた少年が思案に耽っていると
「ねえねえ、もう仕事終わったんでしょ、なら私と遊ぶわよ」
 ぶつかってきた人物は志貴に抱きついた上体を起こして馬乗りになるとそう言い放った。
 ようやく奇襲からの混乱が収まったらしい志貴が見上げると、そこには見た目14,5歳の黒い服に
 身をつつんだ可憐な少女がいた。
「アルトルージュ!いきなりタックルをくらわせるなっていつも言っているだろう。
 それになんでアルトと遊ぶことが決定事項になってるんだ!」
 都古のことで少々凹んでいたところにこのような目にあったのでむっとして大きな声をだすと
 アルトルージュはしゅんとして
「だっ、だってあっちから志貴君が見えたときに声をかけようとしたら志貴君
 なんだか落ち込んでそうな顔をしてたか励まそうとおもって……」
 今にも泣き出しそうな声で言った。
「そ、それは……、悪かった大声なんか出して。でもだからってだ「それに、私を心配
 させたんだから罰として私と遊ぶのは当然のことでしょ?」……きつくことはな」
「な、なに言ってんだよそれとこれとは話が「一緒なの」…………はい」

 かくしてアルトルージュの押しに負けた志貴はアルトルージュといっしょに遊ぶことになり、アルトルージュが
「前から志貴君ときたいと思ってたの」という綺麗な町の夜景が見渡せる有名なデートスポットに着くと



「ああ、アルト、先に言っとくけどな」
「なに?志貴君」

 志貴が唐突に

「俺は今日22時の飛行機で帰る予定だから。」

 と言うと

「な、22時ってあと3時間しかないじゃない!それに、ここから空港までは車で1時間弱
 かかるからあと2時間しか遊べないじゃない!」
「いやそんなこと言われてもまさかアルトが来るとは思ってなかったし…それにこの飛行機じゃないと
 明日に報告にいけないからね」
「報告って……人形師のところ?」
「ああ」
「そんなの後でいいじゃない。私と遊ぶよりそんなことのほうが大事なの?
 今日は、私と1日中遊びましょ?」

 と上目遣いで志貴に[お願い]してきた。
(くっこれは、想像以上の破壊力だ。しかし、都古の、そして明日からの平穏な生活
 のため、ここは心を鬼にして)

「すまない、これだけは譲れないんだ……」

 苦渋に満ちた顔の志貴は、搾り出すように、しかし確固たる意思をもってアルトルージュ
 の願いを拒否した。

「はーあ、そんな顔して言われたんじゃこれ以上わがまま言えないわ
 しかたないわね、次にこっちにくるときは私のところに寄りなさいよ」
「アルトのところって[千年城]か?」
「ええもちろん、他にどこがあるってゆうのよ。
 リィゾとフィナだって歓迎するはずよ。あとプライミッツもね」
「はは…、リィゾやプライミッツはともかくフィナの歓迎は遠慮したいな」
「ふふ、じゃあね」
「なんだもう帰るのか?」
「うん、なんか遊ぶ気なくなっちゃった」
「そうか、ごめんな次来たときは絶対にいくから」
「絶対だからね。バイバイ志貴君」
「またな、アルト」


 そうして一人になった志貴は空港に向かうためタクシーを拾った。

「次にこっちにくるのはいつになるだろうな……」


 タクシーの中でまだわからぬ先のことを考え一人つぶやく。
(そういや今日リィゾたちはどうしたんだろプライミッツすらいなかったしな)
 そうこうしているうちに空港についた、運転手に料金を払いタクシーを降り空港のロビー
 に向かって歩きだすと志貴の顔が険しいものに変わる。
(この気配は丘にいたときから感じていたものってことは、こいつ
 の狙いはアルトじゃなく初めからおれってことか、しかしなぜだ?)
 相手の意図するところが完全に読めない志貴は、なんにしろ一般人を巻き込むわけには
 いかないと考え人目につかない通りに追跡者を誘い込むことにした。

「で、さっきからなんのようだ?」

 あくまでも淡々と喋る志貴は先ほどまでとは明らかに雰囲気がちがう

「ほう、気づいていたか。さすがだな、殺人貴」

 殺人貴と呼ばれたときわずかに志貴の眉が動いた。

「貴様、どこでその名を?」
「ふん、如何に巧妙に隠そうと私に調べれぬことなどないのだよ」
「そうか、それでそんな優秀な死徒が俺に何のようだ」
「いやなに、危険な芽は早めに摘んでおこうと思ってね」

 言うなり死徒は、志貴に襲い掛かった。

「もらったぁ!」
 死徒は叫びながら腕を振るう。
(相手はたかがニンゲンいくら強いと言われようが超越者となった
 私の敵ではない)
 吸血鬼となり人間の持つ能力を遥かに超えた力をもち、脆弱な人の体にとっては
 必殺の一撃を志貴に向かって振り下ろし勝利を確信する。


 しかし

 

「なに!?」
「遅い……」

 死徒ですら捕捉できない速さで移動し志貴は相手の横に立っていた。
 そう、志貴は確かに人間である。しかし[ただの]人間ではなかった。

「飛べ」

 言葉と同時に敵の脇腹を蹴り上げる。

「ぐっ、がっ」

 意味のない言葉を吐きながら死徒は空へと向かい飛んでいく。
 その死徒を志貴は人とは思えぬ跳躍力をもって追いかるいつのまにか
 その右手にはナイフが握られていた。そして


「その程度の力で俺を殺そうとは、
 思い上がりも甚だしい。
 貴様は、――斬刑に処す――」


 言い終わると同時に右手が増えたかの様にすら見える
 閃光にも似た無数の斬撃が走る。
  ―閃鎖・八点衝―
 志貴が使う技で最も使い勝手の良い技の一つで
 最も破壊力のある技でもある。

「ニ、ニンゲン如きにぃーーー」

 さすがは腐っても吸血鬼、と言うところか
 あれほどの斬撃を受けて尚、断末魔をあげることができるとは。
 しかし、如何に吸血鬼とは言えそれで力尽きたのか地面に落ちるとともに
 灰となってきえていった。

「ふん、七夜を出すほどでもなかったな」

 そういうと志貴は何事もなかったかのように空港に行き日本行きの飛行機に乗った。

「次に目が覚めたら日本かな。ふー、やっと帰れる」

 よほど疲れていたのか、志貴はそのまま目を閉じるとすぐに眠りについた。


















あとがき

つ、疲れた初めてSSを書くと言う作業をしましたがここまで疲れるとは
長編連載している方々はあらためてすごいなーとおもいました。戦闘シーンは難しすぎです。(汗
尚、この作品が私の処女作となります。これからもっと良い作品を作れるよう
がんばって行きたいと思いますので、どうか生暖かい目で見守っていてくだい
こんな拙作でしたが最後まで読んでくれた方には感謝の言葉もありません。
次の作品ができたときにまた見てもらえたら幸いです。


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